売られたエル子(終わり)
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売られたエル子(終わり)
「これをお飲み」
おじいさんはエル子に覆い被さると半開きの口の中に液体を流し込んだ。
「うう」
苦味でむせたが次第に落ち着いた。
と同時に目の前の空間がゆがみ徐々に意識が遠のいた。
「夜は長い」
強烈な日差しを顔に浴びてエル子は目を覚ました。
「朝…」
「夢だったの?」
ぼうっとする頭を起こすようにつぶやいた。
優しいおじいさんがあんなことするはずなっ…
ふいに胸の窮屈さに気が付いた。
「…服が…」
身につけていたのは寝間着でも「夢の中」で着ていたあじさいの浴衣でもなかった。
―――――
―――
(夢)の映像が断片的に浮かんだ
(夢だったのよね?)
何かを口に含んだ後のもうろうとしていた記憶があふれてくる。
「この服もエル子によく似合うのぉ。よろず屋で買った服じゃよ」
―――
―――――
記憶をたどっていたエル子の肩を背後からぽんぽん叩く手に「ひい」と小さな悲鳴をあげた。
老人が後ろ手に腰を曲げて立っていた。
「おじい様…。わたし、寝坊をしてしまったみたい。すぐに朝の仕度をしますね」
「のう、エル子」
「はい……?」
「今夜は鶴の着物がよいかの」
~おわり~
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