売られたエル子(続き)
昼間のおじいさんは起きているのか寝ているのかわからない。
目は半開きでうとうとし、動きも遅い。
口に物を入れたまま寝ている時はエル子が指を入れ、かき出してやる。
しかし今、目の前にこの人はまるで人が変わったように力が強く腕をねじ伏せられた。
「おじいさん。目を…目を覚ましてください」
腕を振りほどき距離を保つと、おじいさんを正気に戻さねばとエル子は必死に叫んだ。
「わたしが必ずお助けしますから」
ぎらぎらした目。
かさかさのめくれた唇からもれる老人の笑み。
エル子はおじいさんが呪いにかかっているのだと思った。
優しいおじいさんが突然人が変わるなんて…呪われている。人の心を失ってしまったのだと。
老人は歯と歯の隙間からクチャと唾液の音を鳴らすとかすれた声で言った。
「エル子や。優しい子だね。わしは寝てもおらんし、くるってもおらんよ。
どうか、寂しいじじいの願いを大人しく聞いておくれ」
夜は長い
おじいさんは獣だった。
エル子が「こわい…こわい」と言うとおじいさんは「よしよし」と優しかった。
そこには昼間のおじいさんがいた。
気が付くと目尻に涙がたまっていてギュッと目を閉じるとたくさん、流れた。
おじいさんは時折苦しそうに息をつぎ、エル子を心配させた。
⏩️売られたエル子・続き(終わり)
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